説明

一定の左心室ペーシングを確保するための方法と装置

両室ペーシングまたは左心室単独ペーシングを含む心臓再同期療法(CRT)ペーシングを送達するための心臓治療システムの作動方法が説明される。CRTペーシングの片方の心室または両方の心室への送達が、ある心臓周期で予定される。心室のペーシング遅延中に心室の固有の脱分極が検出された場合は、予定された心室へのCRTペーシングがその心臓周期では抑制される。固有の心室の間隔、例えば固有の脱分極によって決定される固有の房室間隔が測定される。以後の心臓周期中、心室のペーシング遅延は測定された固有間隔以下に短縮される。以後の心臓周期中にペーシングが送達された後で心室の捕捉の確認が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には心臓ペーシング治療に関し、具体的には、心臓再同期療法における左心室ペーシング用の、一定の捕捉を確保するためのペーシングパラメータを決定するための方法とシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
うっ血性心不全は心臓のポンプ能が失われることであり、末梢組織の需要を満たすのに十分な血液を送達できなくなる。うっ血性心不全(CHF)は、衰弱、呼吸の消失、および肺やその他の体内組織への体液の貯留を引き起こす場合がある。
【0003】
CHFは通常は慢性的な長期的症状であるが、突然発生する場合もある。この病態は左心、右心、または心臓の両側に発症する可能性がある。心不全の原因は様々であり、主として虚血性心疾患である。虚血性心疾患が原因の心筋の変性は、心肥大と収縮の低下をもたらす。収縮の低下によって心臓の血液拍出量が低下し、典型的には心拍数が増加する。肥大した心臓組織に心臓伝導路のブロックが生じる可能性もあり、肥大した心臓組織を通過する心臓の調律を制御する信号の伝達速度を低下させる。例えば、左心室にCHFが生じると、左心室の収縮を制御する信号が遅延し、左心室と右心室の収縮が同時に起こらなくなる。左心室と右心室の非同期性の収縮は心臓のポンプ効率を低下させる。
【0004】
CHFは薬物療法および/または心臓ペーシング療法によって治療されてよい。心機能の改善を目的とした心腔の収縮の同期性を促進するためのペーシング療法は一般に心臓再同期療法(CRT)と呼ばれる。一部の心臓ペースメーカーは、複数の心腔のペーシングを送達することによってCRTを行うことができる。高い同期性で心腔を収縮させるような順番でペーシングパルスが心腔に送達され、心臓のポンプ能が高まり、身体の末梢組織への血液送達量が増加する。右心室と左心室の収縮が同期しない場合は、左心室と右心室を再同期させるためにCRTペーシングが用いられてよい。CRTの利点を得るためには左心室のペーシングの成功が不可欠である。両心房ペーシング、または4つ全ての心腔のペーシングも使用されてよい。
【0005】
ペーシング療法は、ペーシングパルスのタイミングと順序を制御するペーシング遅延を使用して1つまたは複数の心腔のペーシングを行うことによって実施される。高い同期性によって心機能の改善を達成するために、これらのペーシング遅延の適切な仕様が求められる。上述の理由のため、そして本明細書を読み進めることによって当業者に明らかになる後述のその他の理由のため、当分野においてCRTペーシングに使用される遅延の決定を提供する方法とシステムの必要性がある。本発明はこれらの必要性およびその他の必要性を満たすものである。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、少なくとも左心室のペーシングを含む心臓再同期療法(CRT)用の心臓ペーシングパラメータの決定のためのシステムおよび方法に関する。
本発明の一実施形態は、左右心室のペーシングまたは左心室単独のペーシングを含む心臓再同期療法(CRT)ペーシングを送達するための心臓治療システムの作動方法を含む。CRTペーシングの片方または両方の心室への送達が、ある心臓周期で予定される。心室のペーシング遅延中に心室の固有の脱分極が検出された場合は、予定されていた心室へのCRTペーシングがその心臓周期では抑制される。固有の心室の間隔、例えば固有の脱分極によって決定される固有の房室間隔が測定される。以後の心臓周期中は、心室のペーシング遅延は測定された固有間隔以下に短縮される。以後の心臓周期中にペーシングが送
達された後で心室の捕捉の確認が行われる。
【0007】
本発明の様々な態様によると、ペーシング遅延は右房室遅延、左房室遅延、および心室間遅延のうちの1つまたは複数を含んでよい。
ペーシング遅延は、以後の多数の心臓周期の間、短縮された値に留まってよい、または以後の周期で捕捉が確認されない場合はさらに短縮されてよい。捕捉が確認された場合、1つ以上の以後の心臓周期中にペーシング遅延を徐々に延長する、例えば、既定量だけ漸次延長してよい。
【0008】
1つの実施によると、CRTペーシングの左右心室への送達が予定される。左心室または右心室へのCRTペーシングは、心室のペーシング遅延中に発生する固有の脱分極によって抑制される場合がある。例えば、予定された右心室ペーシングは、右心室ペーシング遅延中に発生する固有の右心室の脱分極によって抑制される場合がある。予定された左心室ペーシングは、左心室ペーシング遅延中に発生する固有の左心室の脱分極によって抑制される場合がある。左右心室に対するペーシングは、それぞれのペーシング遅延中に発生する両心室の固有の脱分極が発生する場合、抑制される場合がある。心室に対してペーシングが抑制される場合、その心室の固有間隔が測定される。その心室に対する以後のペーシング遅延は、その心室で測定された固有間隔に基づいて短縮される。
【0009】
さらなる態様によると、心室の固有の脱分極がペーシング遅延中に検出されない場合は、CRTペーシングは予定どおり送達される。ペーシングに対する心臓の反応(例、捕捉、融合、または固有の活性化を伴うまたは伴わない心室の捕捉不全)が判定される。心室のペーシング遅延は、心臓のペーシング反応に基づいて以後の心臓周期用に調節される。例えば、捕捉が検出されている限りは以後の心臓周期に対して同じペーシング遅延が維持されてよい。別の実施では、捕捉が検出されており、固有の脱分極の検出に対応して以前にペーシング遅延が短縮された場合には、以後の周期ではペーシング遅延は延長されてよい。融合が検出された場合は、ペーシング遅延は漸次短縮されてよい。捕捉不全が検出された場合は、ペーシングエネルギー出力に影響する1つまたは複数のペーシングパラメータ(例、電流、電圧、パルス幅、および/またはパルス波形)を調節してよい。
【0010】
さらなる態様によると、例えば、固有の心房レートを測定することによって心拍数を測定してよい。ペーシング遅延は、心臓のペーシング反応と測定された心拍数の両方に基づいて調節されてよい。1つの実施では、ペーシング遅延を調節するステップは、心拍数によるインデックス付けを行ったペーシング遅延のルックアップテーブルを使用してペーシング遅延を調節するステップを有する。ルックアップテーブルから得られたペーシング遅延の値は、前心臓周期中に固有の脱分極が生じたかどうか、および/または前周期の捕捉状況に応じて心拍ごとにさらに延長または短縮されてもよい。
【0011】
本発明の別の実施形態は、ペーシング遅延、測定心拍数、測定された固有間隔、および複数の心臓間隔での心臓のペーシング反応の間の関係に関する情報の分析担当者への提示を含む、心臓再同期療法(CRT)ペーシング用のペーシング遅延を設定する方法を含む。これらのパラメータは、複数の心臓間隔について決定されて保存される。保存情報は、少なくとも1つの推奨ペーシング遅延を決定するために分析される。少なくとも1つの推奨ペーシング遅延は、ユーザーインターフェースを介して分析担当者に提示される。
【0012】
1つの実施によると、保存情報は、前ペーシング遅延、測定心拍数、測定された固有間隔、および/または複数の心臓間隔での心臓のペーシング反応に基づいて推奨ペーシング遅延のルックアップテーブルを作成するために分析されてよい。
【0013】
本発明のさらに別の実施形態は、少なくとも左心室のペーシングを含む心臓再同期療法
(CRT)ペーシングを送達できる心臓治療システムに関する。このシステムは、右心室および左心室に電気的に接続されるよう構成された電極を含む。センシング回路は、電極に接続され、固有の脱分極の信号およびその他の心臓の信号を電極を介して検出するよう構成されている。ペーシング回路は、電極を介して送達可能なペーシングパルスを生成するよう構成されている。システムは、ペーシングパルスに対する心臓反応を判定できる心臓反応分類回路を含む。システムは、ある心臓周期中の少なくとも1つの心室へのペーシング遅延に対するペーシングの送達を予定するペーシング制御回路をさらに含む。固有の脱分極がペーシング遅延中に検出されると、心室に対する予定されたCRTペーシングは抑制される。固有の脱分極がペーシング遅延中に発生すると、固有間隔(例、固有の脱分極によって始まるまたは決定される房室間隔または心室間間隔)が測定される。以後の心臓周期のペーシング遅延は、測定された固有間隔以下に短縮される。
【0014】
例えば、ペーシング制御回路が左右心室へのCRTペーシングの送達を予定している場合、左右心室のそれぞれのペーシング遅延中に生じる固有の脱分極によってペーシングの1つまたは両方が抑制されてよい。いずれかのペーシングが抑制されると、その心室の固有間隔が測定され、その心室への以後のペーシング遅延を短縮させるために使用される。両方のペーシングが抑制されると、両心室の固有間隔が測定され、両心室の以後のペーシング遅延を短縮させるために使用されてよい。
【0015】
ペーシング制御回路は、心臓反応分類回路が捕捉が生じたと判定するまで、以後の心臓周期において心室に対するペーシング遅延をさらに短縮してよい。捕捉が検出された場合、ペーシング制御回路は、最初のペーシング遅延が達成されるまで以後の各周期に対するペーシング遅延を延長してよい。
【0016】
固有の心室の脱分極が心臓周期のペーシング遅延中に検出されない場合は、CRTペーシングは予定通り送達される。以後の心臓周期の間、心室に対するペーシング遅延は、送達されたCRTペーシングに対するその心室の心臓ペーシング反応に基づいたものであってよい。例えば、心臓反応分類プロセッサは、心室の捕捉、融合、および捕捉不全を識別してよい。以後の心臓周期の心室のペーシング遅延は、心臓ペーシング反応に基づいて調節される。1つの実施では、ペーシング反応として捕捉が検出された場合、ペーシング遅延は以後の周期で同じ値に維持されてよい。ペーシング反応として融合が判定された場合は、融合反応を避けるため、以後の周期ではペーシング遅延を漸次短縮してよい。
【0017】
心臓治療システムは、測定心拍数、測定された固有間隔、および複数の心臓周期での心臓ペーシング反応のような情報がその内部に保存されるメモリも含んでよい。完全に植込まれてよい、または連携して作動する内部および外部構成要素を有していてよいペーシング制御回路は、CRTペーシング用の1つまたは複数のペーシング遅延を決定するために保存情報の分析を行ってよい。分析は、前ペーシング遅延、測定心拍数、測定された固有間隔、および複数の心臓周期での1つまたは両方の心室の心臓ペーシング反応の1つまたは複数を考慮してよい。
【0018】
1つの実施では、心臓治療システムは、測定心拍数、測定された固有間隔、および複数の心臓間隔での心臓ペーシング反応に関する情報を保存するために構成されるメモリを含む。メモリは、心拍ごとにペーシング遅延を調節するために使用されるルックアップテーブルを保存してよい。システムは、前ペーシング遅延、測定心拍数、測定された固有間隔、および/または複数の心臓間隔での心臓ペーシング反応の間の関係を示す情報を分析担当者に対して提示するよう構成された外部ユーザーインターフェースも含んでよい。ペーシング制御回路は、以後の心臓周期用の少なくとも1つの推奨ペーシング遅延を決定するために、メモリ内の保存情報を分析してよい。1つまたは複数の推奨ペーシング遅延は、推奨ペーシング遅延を分析担当者が許可するまたは無効にできるようにユーザーインター
フェースを介して分析担当者に提示されうる。推奨ペーシング遅延は、右房室遅延、左房室遅延、および心室間遅延のうちの1つまたは複数であってよい。
【0019】
心臓治療システムは、患者の血行動態のニーズに基づいて出力を生成するよう構成されたセンサも含んでよい。ペーシング制御回路は、センサの出力に基づいてペーシング遅延を調節してよく、故にペーシング遅延を調節する際は患者の血行動態ニーズを考慮する。
【0020】
上記の本発明の概要は、本発明の各実施形態またはあらゆる実施を説明するためのものではない。以下の詳細な説明と請求項を付属の図面と併せて参照することによって、本発明の利点と実現が、さらに深い本発明の理解とともに明らかになり理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(A)−(B)心房のトラッキングまたは房室順次CRTペーシング用のペーシング遅延を示すタイミングの図である。心房のトラッキングまたは房室順次CRTペーシング用のペーシング遅延を示すタイミングの図である。
【図2】本発明の実施形態による、LV補足状況に基づいてCRTペーシング遅延を調節するためのプロセスを示すフロー図である。
【図3A】本発明の実施形態による、心房レートと併せた補足状況に基づいてCRTペーシング遅延を調節するためのプロセスを示すフロー図である。
【図3B】本発明の実施形態による、一定のLVペーシングを促進するために、感知された収縮に続いてペーシング遅延を短縮してから、以後の収縮において徐々にペーシング遅延を延長するプロセスを示す図である。
【図4A】本発明の実施形態による、CRTペーシング遅延の決定を容易にするために表示されてよい、ペーシング中の様々な心臓反応に関する保存情報をまとめた棒グラフである。
【図4B】本発明の実施形態による、CRTペーシング遅延の決定を容易にするために表示されてよい、ペーシング中の様々な心臓反応に関する保存情報をまとめた棒グラフである。
【図4C】本発明の実施形態による、CRTペーシング遅延の決定を容易にするために表示されてよい、ペーシング中の様々な心臓反応に関する保存情報をまとめた棒グラフである。
【図5】本発明の実施形態による、CRTペーシング遅延の決定を容易にするために表示されてよい、ペーシング中の様々な心臓反応に関する保存情報をまとめた棒グラフである。
【図6】本発明の実施形態による、提示されたペーシング遅延を確認するため、またはペーシング遅延を調節するためにユーザーによって操作されてよいユーザーインターフェース部品を示す図である。
【図7】本発明の実施形態による、決定されたペーシング遅延を使用するCRTペーシングに使用されてよい植込み型心臓デバイスの図である。
【図8】本発明の実施形態による、一定のLVペーシングのためのペーシング遅延を調節すべく、心臓ペーシング反応状況およびレート情報を利用できる心臓システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は各種の修正および代替形態を受け入れるが、その具体的内容が例として図面に示されており、詳細は下記で説明する。しかし、その意図が、説明される特定の実施形態に本発明を限定することではないことを理解する必要がある。それどころか、本発明は、添付の請求項によって定められる本発明の範囲内に含まれる全ての修正、等価物、および代替形態を含むことを意図している。
【0023】
例示された実施形態の以下の説明において、本明細書の一部を成す添付の図面への言及が行われ、本発明が実施されてよい各種の実施形態が例として示される。本発明の範囲から逸脱することなく、その他の実施形態が利用可能であり、構造的および機能的変更が実施されうることが理解される。
【0024】
本発明によるシステム、デバイス、または方法は本明細書で後述される特徴、構造、方法、またはそれらの組み合わせの1つまたは複数を含んでよい。例えば、デバイスまたはシステムは、後述する有利な特徴および/またはプロセスの1つまたは複数を含むように実施されてよい。そうしたデバイスまたはシステムは、本明細書に記載する特徴の全てを含んでいる必要はないが、有用な構造および/または機能性を提供する特定の特徴を含むように実施されてよいことが意図される。そのようなデバイスまたはシステムは、様々な治療的または診断的機能を提供するために実施されてよい。
【0025】
本発明の実施形態は、心室ペーシング遅延および/またはペーシングエネルギーパラメータの調節によって一定の心室ペーシングを確保するまたは促進するためのシステムおよび方法に関する。ペーシング遅延の調節は、例えば1つまたは複数の房室遅延および/または心室間遅延を調節するステップを含んでよい。ペーシングエネルギーパラメータの調節は、ペーシングパルスの電圧、電流、幅、および/または波形の1つまたは複数を調節するステップを含んでよい。本明細書で説明する技法は、心臓再同期ペーシング療法(CRT)の送達を高めるためにペーシング遅延および/またはペーシングエネルギーを設定するのに特に有用である。
【0026】
CRTは、伝導遅延を補償し、ポンプ運動を改善する方法で1つまたは複数の心腔に適用されるペーシング刺激を使用する。CRTは、片方または左右心房および/または片方または左右心室のペーシングを使用してよい。例えば、CRTペーシングが片方または左右心室に適用されるとき、同期性の高い心室の収縮が達成され、ポンプ効率が改善され、心拍出量が増加する。CRTは、左右両方の心室内で、または左心室(LV)もしくは右心室(RV)単独の内部でペーシングを行うことによって特定の患者において実施されうる。例えば、いくつかのCRTの構造では、心房のセンシングまたはペーシングに対する最適ペーシング遅延に続いてRVペーシングが送達されてよく、LVペーシングは、右心室(RV)ペーシングまたはセンシングに対して開始される最適遅延の後で送達されてよい、または心房のセンシングまたはペーシングに対して開始される最適遅延の後で送達されてよい。いくつかの構造では、再同期ペーシングは、右心室および左心室に対するペーシングが同時にまたは順次行なわれ、ペーシング間に心室間遅延(IVD)がある、両室ペーシングを使用してよい。IVDは、両室オフセットまたはLVオフセットとも呼ばれる。
【0027】
CRTの1つの例では、心房のペーシングおよびセンシングは、終了時に右心室へのペーシングをもたらす房室遅延(AVDR)のトリガーとなる。左心室へのペーシングは、
AVDRの終了に対して定められたIVDにて送達される。このペーシングシナリオは、
心房のセンシングまたはペーシングと予定されている右心室へのペーシングの間の房室遅延(AVDR)および心房のセンシングまたはペーシングと左心室への予定されているペ
ーシングの間に生じる別の房室遅延(AVDL)に関しても説明されてよい。
【0028】
CRTペーシングは多くの場合は抑制デマンドモードで実施され、ペーシング間隔の終了前に固有の収縮が心腔内で検出されない場合にペーシングパルスが心腔に送達される。心室CRTペーシングでは、心室ペーシングは典型的には左右心室に適用されるが、いくつかの実施では、単独の心室、例えばLVのペーシングが行われてよい。いくつかの実施では、両室ペーシングまたはLV単独ペーシングを使用するCRTペーシングは、心房のトラッキングまたはAV順次ペーシングモードで実施されてよい。これらのペーシングモ
ードでは、センシングまたはペーシングが房室遅延を開始し、固有の心室の脱分極が房室遅延の終了前に感知されなければ心室ペーシングが送達される。
【0029】
AVDRおよびAVDLの心臓周期における持続時間が同一であると、右心室と左心室の同時ペーシングをもたらす。AVDRの持続時間がAVDLの持続時間と異なる場合、AVDLとAVDRの差である心室間遅延(IVD)が存在するペーシングとなる。AVDR
正のIVD(AVDL>AVDR)を図1Aに示す。図1Aの検討から明らかなように、このペーシングの実施は、最初に右心室へ、その後左心室へ送達されるペーシングをもたらす。AVDRと負のIVD(AVDL<AVDR)を図1Bに示す。このペーシングの実施
では、ペーシングは最初に左心室へ送達され、続いて右心室へのペーシングが行われる。抑制デマンドペーシングでは、AVDR中に固有の右心室の脱分極が生じると、少なくと
も予定された右心室ペーシングが抑制され、RVとLVペーシングの両方が抑制される可能性もある。これに対応して、AVDL中に固有の左心室の脱分極が生じると、少なくと
も予定された左心室ペーシングが抑制される。
【0030】
当業者は、タイミング間隔AVDR、AVDLに関して説明されるCRTペーシングは、IVD=AVDL−AVDRであるタイミング間隔AVDRとIVDに関しても説明されて
もよいことを理解するであろう。本明細書での考察のために、CRTペーシング遅延は、AVDRとAVDLに関して説明される。この用語の選択は、説明のために行われるもので、本明細書で説明される方法またはデバイスを限定するものではない。本発明がAVDL
とIVDまたはAVDRとIVDの用語を使用して代わりに説明され実施されてよいこと
を当業者は容易に理解するであろう。
【0031】
本発明の方法、デバイス、およびシステムは、CRTペーシング療法において実施されるペーシング遅延、例えば心臓再同期療法に使用されるAVDRおよび/またはAVDLの決定を提供する。本発明の実施形態によると、右心室および左心室ペーシング遅延および右心室および左心室ペーシングエネルギーの1つまたは複数に対して行われる調節は、固有の伝導データと心臓ペーシング反応の判定に基づくものであり、心拍数も考慮される。本発明の実施形態は、両室ペーシングまたはLV単独ペーシングを使用するCRTペーシングに関して説明されるが、概念は両心房または4つの心腔のペーシングにも当てはまる。
【0032】
図2のフロー図は、本発明の実施形態によるCRTペーシングパラメータを設定するためのプロセスを示す。この例では、少なくともLVのペーシングを使用する心臓再同期療法(CRT)ペーシングは、心拍ごとのLVのペーシング反応の判定とともに実施される。心拍ごとに心臓ペーシング反応を判定するアルゴリズムは、送達されたペーシングに対するLVまたはRVの反応を判定するために使用される。ペーシング遅延および/またはペーシングエネルギーを含むペーシングパラメータは、RVおよびLVペーシング、またはLV単独ペーシングに対する心臓の反応(例、捕捉、融合、捕捉不全、他)と心臓組織の伝導遅延を示唆する固有間隔の計測に基づいて心拍ごとに調節される。
【0033】
このプロセスによると、LVペーシングを含むCRTペーシングが各心臓周期で予定される(205)。上記で詳細に考察したように、CRTペーシングは、本明細書ではAVDLと呼ぶペーシング遅延に対する少なくともLVペーシングの送達を予定するステップ
を含む。AVDL中、LVペーシングの送達の前にLVの固有のイベントが感知された2
10場合、LVに対するペーシングは抑制され(215)、心房イベントと固有のLV脱分極の伝導間隔(AVIL)が測定される(220)。測定された伝導間隔に基づいてA
VDLが短縮される(225)。例えば、AVDLは、現在のAVILとAVDLの差よりわずかに大きい量だけ短縮されてよい。次の周期でAVDLを短縮した後、ペーシングパル
スの送達に続いてLV捕捉の確認が行われる。以後の収縮でLVペーシングが再度抑制さ
れる場合は、LV捕捉が検出されるまでペーシング遅延が再度短縮されてよい。
【0034】
ペーシング遅延の終了前に固有のLV脱分極が生じなければ(210)、LVペーシングは予定通りに送達される(230)。LVペーシングの送達に続いて、図2に示す4つの状態の1つが生じてよい。LVがペーシングによって捕捉されてもよく、融合収縮が生じてよく、またはLVペーシングは捕捉をもたらさなくてよい。LVの捕捉不全は、心臓周期中の固有の脱分極の有無に関係なく生じてよい。
【0035】
いくつかの実施では、心室の心臓ペーシング反応は、ペーシングパルスの送達後に感知される心臓の信号の形態を分析することによって判定されてよい。感知された心臓の信号は、各種のペーシング反応で予想される形態を特徴付けるテンプレートまたはその他の種類の基準と比較されてよい。形態に基づく捕捉の検出は、感知された心臓の信号の特徴が、例えば捕捉、融合、または固有の活性化を伴う捕捉不全に予想される特徴と一致するかどうかを決定するために、捕捉検出時間内における心臓信号のピークの振幅および/またはピークのタイミングを分析するために使用されてよい。信号が閾値の振幅を超えない場合は、固有の活性化を伴わない捕捉不全が判定されてよい。心臓反応分類のための形態分析は、心室内でのペーシングに続いて感知された左および右の心臓の信号に基づいて左心室および右心室に対し個別に適用されてよい。いくつかのシナリオでは、心臓反応の判定のために分析された心臓の信号は、感知された信号の積分または微分を含んでよい。
【0036】
1つの形態に基づく技法によると、ペーシング後に感知された心臓信号の特徴が抽出される。抽出された特徴は、特徴相関係数分析の使用によって、特定の種類の心臓ペーシング反応を特徴づけるテンプレート特徴と比較される。
【0037】
心臓反応の測定のためのいくつかの手法は、両側の心腔、例えば右心室と左心室内で生じる、ペーシングされたまたは感知された心臓イベントによる脱分極波面の打消しに基づいている。1つの典型的な状況では、左右心室のペーシングを順次行った後で、システムは、最初にペーシングされる心室内の心臓の活動を、2番目にペーシングされる心室へ送達されるペーシングパルスに続くクロスチャンバーセンシング時間の間に感知する。両ペーシングパルスがそれぞれの心腔を捕捉した場合、最初にペーシングされた心室の脱分極波面は2番目にペーシングされた心室の脱分極波面と衝突し、最初にペーシングされた心室内の心臓の活動がクロスチャンバーセンシング時間の間に打消される。最初にペーシングされた心室が捕捉されなかった場合、打消しはおこらず、2番目にペーシングされた心腔の活性化に対する心臓の活動はクロスチャンバーセンシング時間において明らかとなる。
【0038】
その他の様々な実施において、捕捉の確認は、血行動態の変化の分析、インピーダンスの分析、心音および捕捉状況のその他のあらゆる指標の分析によって達成されてよい。
いくつかの実施形態では、捕捉、融合、および固有の活動を伴うまたは伴わない捕捉不全の識別が達成されてよい。これらの反応シナリオのそれぞれでは、アルゴリズムはペーシングパラメータを調節するための異なるプロセスを実施してよい。例えば、融合の検出は、ペーシング遅延がわずかに長すぎることの表れであり、以後の収縮での融合の発生の可能性を抑えるために漸次的な量だけAVDLを短縮してよい(240)。固有の活性化
を伴うまたは伴わない捕捉不全は、LVペーシングエネルギーが不十分であることの表れの可能性がある。捕捉不全が検出された場合、アルゴリズムはLVペーシングエネルギーの上昇を実施する(250)。捕捉不全の判定とともに固有の脱分極が検出された場合は、次の周期ではAVDLも変更されてよい。
【0039】
LVの捕捉が検出された場合、ペーシングエネルギーは捕捉を達成するのに十分であり、LVペーシングエネルギーに対する調節は行われない(245)。次の心臓周期では現
在のAVDLが維持される。場合により、詳細を後述するように、心拍数の変化を補償す
るためにAVDLも調節されてよい。
【0040】
図2のフロー図は、LVペーシングパラメータの調節を示すが、RVペーシング遅延および/またはペーシングエネルギーの調節、および/またはRVおよびLV両方のペーシング遅延および/またはペーシングエネルギーの調節が、同一または類似の方式で実施されてもよい。表1は、一実施形態に従って行われ得るペーシング遅延および/またはペーシングエネルギー調節の概要を示す。
【0041】
【表1】

表1は、1−1から1−13とした13通りのCRTペーシングシナリオを、次の収縮でのペーシングパラメータの変更の根拠とともに示す。あらゆる心臓周期中に、片方または両方の心室は予定されたペーシングの前に固有に脱分極してよく、感知された心室の脱分極は表1ではSと示される。心臓のペーシングが脱分極の伝播波を生成する場合、ペーシングは心室の捕捉(C)または融合収縮(F)をもたらしてよい。心室がペーシングによって捕捉されない場合、固有の活性化を伴うまたは伴わない捕捉不全が検出される。これらの捕捉不全の可能性は、それぞれNC+IおよびNCと表される。表1では、Xは起こりうるあらゆるペーシング反応S、C、F、NC+I、およびNCを表す。
【0042】
例えば、表1に記載のシナリオ1−1を検討する。シナリオ1−1では、心臓周期のRVペーシングが右心室を捕捉する(C)。固有のLV脱分極(S)がLVペーシングの送達の前に感知される。次の周期ではAVDRが維持される。心房イベントと固有の左心室
脱分極の間の測定間隔AVILに基づいてAVDLが調節される。この例では、RVペーシングが捕捉をもたらし、LVペーシングの送達の前にLVが固有に脱分極し、LVペーシングエネルギーが捕捉をもたらすのに不十分であるという指標をもたらさなかったため、RVペーシングとLVペーシングのペーシングエネルギーは変更されない。
【0043】
次に、表1に記載のCRTペーシングシナリオ1―3を検討する。現在の心臓周期中に、右心室ペーシングがRVの捕捉(C)をもたらし、LVペーシングはLVの捕捉をもたらさない(NC)。固有の脱分極を伴う捕捉不全(NC+I)がLVペーシングの送達後に検出される可能性がある。次の心臓周期では、RVペーシング間隔AVDRが維持され
る。LVペーシングエネルギーは、既定の量だけ上昇させる。場合により、心房イベントとLVの固有の脱分極の間で測定された間隔である測定AVILに基づいてLVペーシン
グ間隔AVDLが調節される。LV閾値試験が予定される。
【0044】
さらなる例として、表1に記載のCRTペーシングシナリオ1−4を検討する。現在の心臓周期中、RVペーシングパルスが捕捉をもたらし(C)、融合収縮(F)がLVペーシング後に検出される。故に、LVペーシングは、捕捉をもたらすのに十分なエネルギーであると考えられるが、融合の発生を低下させるためにLVペーシングのタイミングが調節されてよい。このシナリオでは、AVDRは変更されず、次の心臓周期中に発生する融
合の可能性を低下させるためにAVDLは漸次的な量だけ短縮される。
【0045】
表1は、上述の例と類似の方式で解釈されてよいその他のCRTペーシングシナリオを示す。表1に提示された例では、LVの反応にかかわらず、RVで捕捉の消失が検出された場合、RVペーシングエネルギーを上昇させ、RV閾値試験が予定される。
【0046】
前述のように、CRTは患者の心臓のポンプ能を改善するために送達され、通常は心房トラッキングまたはAV順次ペーシングモードで送達される。これらのペーシングモードは、心室収縮の同期性を改善するためにペーシング遅延、例えばAVDRおよびAVDLを実施する。場合により、CRTペーシングは心房収縮による最適な前負荷の後の収縮期中に心室の同期をもたらす。最適な血行動態にとっては、より生理的なペーシング反応をもたらすために、固有のAV間隔が通常心房レートとともに変動する方式と同じように、心房レートとともにペーシング遅延が変動するのが望ましい。ポンプ能の消失を補償するために心拍数が上昇することから、心不全患者が経験することが多い心房レートの上昇におけるペーシング遅延の変動が特に望ましい。
【0047】
心房の感知されたまたはペーシングされた収縮間の間隔の逆数として決定されうる測定心房レートに基づいて、AVDRおよび/またはAVDLの変動が実施されてよい。典型的な一実施形態では、AVDRおよび/またはAVDLに対するレート調節は、それぞれ右心室および/または左心室の捕捉に続く心臓周期のために、および右心室および/または左心室の捕捉不全に続く心臓周期のために実施される。何らかの固有の活性化が生じるある周期、すなわち心室のペーシングを抑制する感知された心室の脱分極、融合収縮、または固有の活性化を伴う捕捉不全の収縮に続く心臓周期のためのペーシング遅延は、レートに応じて変動されないが、前周期の測定AV間隔(AVIRまたはAVIL)に基づいて調節される。
【0048】
図3Aのフロー図は、固有の心室の脱分極がない心臓周期のレートに基づくペーシング遅延AVDRおよび/またはAVDLの調節(305)および固有の心室脱分極が生じる心臓周期のための前周期の測定された固有間隔に基づくCRTペーシング遅延AVDRおよ
び/またはAVDLの調節(310)の概念を示す。
【0049】
現在の心臓周期の1つまたは複数のペーシング遅延AVDRおよび/またはAVDLがレ
ートに対して調節されるまたは前心臓周期の測定された固有間隔AVIRおよび/または
AVIL未満になるように設定されるかどうかは、前心臓周期中のペーシング遅延AVDRおよび/またはAVDL中に固有の脱分極が感知されるかどうかに左右される。例えば、
心室の固有の脱分極が、心室にペーシングパルスが送達される前に心臓周期中に感知される場合、関連する固有の房室間隔AVIRおよび/またはAVILが測定され(325)、以後の心臓周期に使用されるペーシング遅延AVDRおよび/またはAVDLは測定間隔AVIRおよび/またはAVIL未満になるように調節される(310)。
【0050】
ある心臓周期用のCRTペーシング遅延AVDRおよび/またはAVDLが設定された後で(305、310)、CRTペーシングが予定される(312)。固有の右心室または左心室脱分極がそれぞれAVDRおよび/またはAVDL間隔において感知されない場合(315)、右心室および左心室ペーシングが予定通り送達される。ペーシングに対する心臓の反応が判定される(330)。CRTペーシングが心室の捕捉をもたらす場合は、次の心臓周期中のその心室に対するペーシング遅延は心房レートに従って調節される(305)。CRTペーシングが心室の捕捉をもたらさなかった場合は(すなわち、捕捉不全または捕捉不全と固有の収縮)、その心室のペーシングエネルギーを上昇させ(340)、次の心臓周期用のペーシング周期を心房レートに従って調節する(305)。
【0051】
ペーシングパルスの送達に続いて融合収縮が生じる場合がある。ペーシングによって生じた脱分極波面が、ペーシング部位に非常に近い固有の脱分極波面とぶつかった場合に融合収縮が生じる。CRTペーシングが右心室および/または左心室の融合をもたらした場合、次の心臓周期のためにAVDRおよび/またはAVDLが既定量だけ短縮される(345)。AVDRおよび/またはAVDLは心房レートに従って調節されてもよい(305)。
【0052】
それぞれ右心室および左心室のAV伝導の遅延を示す測定固有AV間隔AVIRおよび
/またはAVILは、ペーシング遅延のレートインデックス付きテーブルを更新する(3
13)ために使用されてよい。測定固有AV間隔(AVIRおよび/またはAVIL)に基づくペーシング遅延AVDRおよび/またはAVDLの計算と測定固有AV間隔に基づくペーシング遅延のレートインデックス付きテーブルの作成の詳細を後述する。
【0053】
ペーシング遅延AVDRおよび/またはAVDLを決定するためのレートインデックス付きルックアップテーブル(または方程式)は臨床血行動態試験に基づいて最初に決定されてよい、および/または定期的に更新されてよく、各種の心房レートにて心機能についてペーシング遅延が最適化される。例えば、心機能は、dP/dt、動脈拍動圧、または心拍出量の測定結果の観点から測定されてよい。
【0054】
様々な心房レートでの最適ペーシング遅延を決定するための臨床血行動態試験は、時間を要し、実施が難しい場合がある。最適ペーシング遅延を決定するためのそのような臨床血行動態試験の代替手段または補助手段として、最適なレートに基づいたペーシング遅延の決定は、植込まれたデバイスによって収集される測定された固有間隔に基づいていてよい。図3Aに関連して説明したように、心拍数に基づく心室のためのペーシング遅延の調節は、心室のペーシングが抑制されず、心臓周期中に心室の固有の脱分極が生じない場合に起こってよい。本明細書で説明するアルゴリズムによって、心房レートの計算に対する調節も行いながら、CRTペーシング中の捕捉状態に基づくRVおよび/またはLVの一定の捕捉をデバイスが達成できるようになる。
【0055】
いくつかの実施形態では、ペーシング遅延、例えばAVDRおよび/またはAVDLは、測定心房レート、測定された固有間隔、および/または前収縮の捕捉状況に基づいて心拍ごとに調節される。表2に示したペーシングシナリオは、表2の例ではペーシング遅延の
調節は固有の脱分極が感知されない心臓周期での心房レートに基づいていることを除き、表1に関連して既に考察したものと類似している。
【0056】
【表2】

例えば、ペーシング周期シナリオ2−1では、RVペーシングは右心室を捕捉し、固有のLVの脱分極はLVペーシングの送達の前に生じる。次の周期では、心拍数の上昇または低下を補償するためにAVDRが調節される。前心臓周期の心房イベントと固有のLV
脱分極の間の測定固有AV間隔であるAVILに基づいてAVDLが調節される。この例では、LVペーシングエネルギーが捕捉をもたらすのに不十分であるということが示されなかったため、LVペーシングのペーシングエネルギーは変更されない。
【0057】
次に、CRTペーシングシナリオ2―3を検討する。心臓周期中に、右心室ペーシングがRVの捕捉をもたらし、LVペーシングはLVの捕捉をもたらさないが、固有のLV脱分極がLVペーシングの送達後に検出される。次の心臓周期では、RVペーシング間隔AVDRは、レートのあらゆる変化を補償するために調節される。LVペーシングエネルギ
ーを既定の量だけ上昇させ、LV捕捉閾値試験が予定されてよい。固有間隔AVILに基
づいてLVペーシング間隔AVDLが調節される。
【0058】
最後に、CRTペーシングシナリオ2−4を検討する。心臓周期中、RVペーシングパルスが捕捉をもたらし、融合収縮がLVペーシング後に検出される。故に、LVペーシングは捕捉をもたらすのに十分なエネルギーであると考えられるが、融合の発生を低下させるためにペーシングのタイミングが調節されてよい。このシナリオでは、レートの変化を補償するためにRVペーシング遅延AVDRが調節され、次の心臓周期中に発生する融合
の可能性を低下させるためにLVペーシング遅延AVDLを漸次的に短縮して調節してよ
い。
【0059】
固有の脱分極の検出後、次の心臓周期のためのペーシング遅延(AVD)は、前周期の測定固有AVI未満になるように短縮される。いくつかの実施形態では、以後の周期中に、レートインデックス付きルックアップテーブルによって示されるペーシング遅延と一致
するまでペーシング遅延は徐々に延長される。
【0060】
ペーシング遅延の漸増は、図3Bのフロー図によって示される。ペーシング周期の開始時(350)に、デバイスは直前の周期に使用されたペーシング遅延AVDRおよび/ま
たはAVDLが、前周期のレートインデックス付きルックアップテーブルの値を下回って
いたかどうかを決定する(355)。ペーシング遅延AVDRおよび/またはAVDLがレートインデックス付きの値より小さくなかった場合(355)、現在の周期のペーシング遅延AVDRおよび/またはAVDLが心房レートに基づいて決定される(305)(図3A)。直前の周期のペーシング遅延AVDRおよび/またはAVDLがレートインデックス付きの値より小さかった場合(355)、ペーシング遅延AVDRおよび/またはAVDLは前周期中に生じた固有の脱分極に応じて短縮されている。デバイスは、ペーシング遅延AVDRおよび/またはAVDLを分析することによって、直前の周期が固有の脱分極を含んでいたかどうか(感知された脱分極によって抑制されるペーシング、融合、または固有の活性化を伴う捕捉不全)を決定する(360)。ペーシング遅延AVDRおよび/また
はAVDLが近い時期に短縮されていた場合、直前の周期に使用されたペーシング遅延は
漸次的に延長され(365)、CRTペーシングが予定される(312)(図3A)。直前の周期が固有の脱分極を含んでいた場合(360)は、次の収縮のためのペーシング遅延AVDRおよび/またはAVDLが測定された固有間隔AVIRおよび/またはAVIL未満の値に短縮される(310)(図3A)。固有の脱分極が生じない限り、レートインデックス付きの値が達成されるまで、以後のペーシング遅延AVDRおよび/またはAVDLに対して漸次的な延長が行われる。
【0061】
本明細書で説明するレートに基づく調節は、長期間にわたりデバイスによって収集されたレートインデックス付き固有間隔データを使用して行われてよい。ペーシング遅延に対する適切な調節は、レートによるインデックス付けが行われるおよび/またはレートの関数として表されるもしくは一連のレートインデックス付き関数として表されるルックアップテーブルに保存されてよい。ペーシング間隔のレートに基づく調節の実施のための方法とシステムの1つの例は、参考として本明細書で援用される共有の米国特許第7,123,960号に記載されている。
【0062】
CRTは、心室間および/または心室内の伝導欠損を補償するために心室ペーシングを適用することによって心室の収縮の伝導順序を制御するために使用される。例えば、CRTは、固有の心臓周期中に、左心室の一部が通常より遅く収縮する場合に生じる左心室機能障害を治療するのに特に有用である。両室ペーシングまたは左心室単独ペーシングを使用するCRTペーシングは、左心室に送達される最初のペーシングによる左心室の早期興奮、その後に続く右心室ペーシング(または固有の脱分極)によって通常より遅い収縮を補償する。
【0063】
左心室ペーシングは左心室の自由壁を興奮させ、右心室ペーシングは心室中隔を興奮させる。望ましい状態は、左心室自由壁と中隔の同時収縮(中隔−自由壁の融合)である。ペーシング遅延の最適値を決定するために被験者母集団に対して臨床血行動態試験が実施される場合、特定の被験者に対する最適遅延と、その被験者の固有の収縮中に測定された右および左の房室間隔、それぞれAVIRおよびAVILの間に相関関係が見出される。米国特許第7,123,960号にさらに詳しく説明されているように、特定の患者に対する最適ペーシング遅延は、規定の係数に関して次のように固有の伝導データから推定されてよい:
AVDR=k5AVIR+k6AVIL+k7 [1]
および
AVDR=k8AVIR+k9AVIL+k10 [2]
規定の係数k5からk10を決定するために、心機能を反映する別のパラメータ(例えば
、最大dP/dtまたは最小心房レート)を同時に測定することによって決定されるような早期興奮タイミングパラメータの最適値に測定固有伝導パラメータの特定の値を関連付ける、臨床母集団のデータが得られる。ペーシング遅延を設定するために方程式中で使用される規定の係数の値を求めるために線形回帰分析が実施され、従って規定の係数は回帰係数である。
【0064】
レートに応じて調節されたCRTペーシングパラメータは、AVDRおよび/またはA
VDLに対するレートインデックス付き方程式のセットを保存することによって、または
これらの方程式から計算されるもしくはその他の方法で決定される値のルックアップテーブルを保存することによって得られてよい。これらのレートに基づくペーシング遅延は、特定のペーシングサイクルに関して上述したようなペーシング遅延調節に使用されてよい。
【0065】
典型的な実施形態では、システムは、異なる心房レートで固有の伝導データを収集することによって、CRTの送達に使用されるレート調節AVDRおよび/またはAVDL間隔を算出する。心房レートは本質的に、またはペーシングの変動の結果として変動する可能性がある。間隔AVIRおよび/またはAVILは各種レートで測定され、これらの固有AVIRおよび/またはAVIL間隔は、例えば上記[1]および[2]のような方程式を用いて、レートインデックス付きルックアップテーブルに保存されるペーシング遅延を計算するために使用される。例えば、各測定AVIRおよび/またはAVILは、それぞれ以前に測定されたAVIRおよび/またはAVIL間隔と平均化されてよい、またはその他の方法で組み合わされてよい。これらの固有間隔の平均または組み合わせは、レートインデックス付きペーシング遅延を計算する、または再計算するために使用される。いくつかの実施形態では、レートインデックス付きペーシング遅延AVDRおよび/またはAVDLは、エントリーとしてルックアップテーブルに保存される。レートインデックス付きルックアップテーブルのエントリーは、以後の心臓周期のためのCRTペーシング遅延のレートに基づく調節を実施するために使用されてよい。CRTペーシングに使用されるペーシング遅延は、ルックアップテーブルのエントリーを使用してよく、固有の脱分極が生じたかどうかに基づいておよび/または前周期の捕捉状況に基づいて心拍ごとにルックアップテーブルの値に対する追加の調節が行われてよい。
【0066】
少なくとも2つの心房レートで測定された固有間隔に基づくルックアップテーブルの作成後、植込み型デバイスは心房レートの変化に伴いペーシング遅延を変化させてよい。1つのルックアップテーブルエントリーは、様々な心房レートに対応してよい。特定のレートに対応するペーシング遅延値がない場合は、デバイスは、レート調節ペーシング遅延を決定するために、現在のレートの上下の心房レートに対するペーシング遅延値の間への内挿を行ってよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、レートに基づくペーシング遅延は、前周期の心臓ペーシング反応状態(捕捉、捕捉不全、融合、他)に関連する保存データを分析することによって決定されてよい。この分析から、各心房レートで優れた捕捉パフォーマンスをもたらすペーシング遅延を後で使用するために保存することができる。この手法によると、植込み型心臓デバイスは、心房レート、ペーシング遅延、測定された固有間隔、および多数の心臓周期でのペーシングに対する反応を測定しメモリに保存する。保存情報は、CRTペーシング中に一定の捕捉をもたらす適切なレートに基づくペーシング遅延を決定するために、植込み型デバイス、患者体外デバイス、または分析担当者によって分析されうる。
【0068】
例えば、保存データから、特定のレートまたはレート範囲において使用される特定のペーシング遅延またはペーシング遅延範囲が一定のCRTペーシングをもたらすことができないことが明らかになった場合、一定の両室またはLVペーシングが促進されるように、
そのレートまたはレート範囲に対するペーシング遅延が短縮されてよい。分析は、例えば、関心のある各レート範囲において、各心室のペーシングされた収縮の割合または数を、固有の心室の脱分極が心腔内の心室ペーシングを抑制した収縮の割合または数と比較することによって実施されてよい。分析は、捕捉、捕捉不全、固有の脱分極を伴う捕捉不全、および/または融合をもたらしたペーシングされた収縮の割合または数も考慮してよい。
【0069】
保存データの分析、ペーシング遅延の算出、および/またはレートインデックス付きペーシング遅延による植込み型デバイスのプログラムのプロセスは、体外デバイスによって実施されてよく、植込み型デバイスによって実施されてよく、または両デバイスとも手順を実施するために使用されてよい。さらに、これらのプロセスは、全自動モードまたは半自動モードで実施されてよい。例えば、自動モードで運転の場合、植込み型デバイスと体外デバイスはテレメトリーリンクを介して通信する。体外デバイスは、植込み型デバイスのデータ、例えば電気記録図の信号、感知されたイベントに対応するマーカー、レートによるインデックス付けが行われた測定間隔、心臓ペーシング反応情報、および/またはその他のデータを受け取る。体外デバイスは植込み型デバイスから取得した情報を処理してレートインデックス付きAVDRおよび/またはAVDLペーシング遅延を決定し、ペーシング遅延のレートインデックス付きルックアップテーブルを用いて植込み型デバイスのプログラムを行う。
【0070】
自動モードの別の実施例では、植込み型デバイスは独立して自動で作動し、電気記録図データ、測定間隔、およびペーシング反応状態を分析してレートインデックス付きペーシング遅延を決定し、以後の周期で使用するためのペーシング遅延のレートインデックス付きテーブルをプログラムする。
【0071】
半自動モードで作動する場合、体外デバイス(例、外部プログラマー)または植込み型デバイスは、臨床ユーザーが見るためのテキストデータおよび/またはグラフィックデータおよび分析、ヒストグラム、統計的分析の適切な形式での表示を提供してよい。例えば、体外デバイスは、測定された固有間隔、心臓ペーシング反応、および心拍数データを分析し、体外デバイスのユーザーインターフェースを介して分析をユーザーに提示してよい。体外デバイスは、例えば、様々な心臓ペーシング反応と心拍数の間の関係を示すグラフを提示してよい。この情報は、一定のCRTペーシングを達成する適切なペーシング遅延を医師が選択するのを支援するため、体外デバイス上のディスプレイを介して提示されうる。ユーザーインターフェースは、植込み型デバイスの選択されたペーシング遅延によるプログラムをもたらす分析担当者からの入力を受け入れるようにアレンジされてよい。例えば、いくつかの半自動モードでは、体外デバイスはテキスト情報および/またはグラフィック情報の表示を生成し、例えばタッチスクリーン、キーボード、マウス、またはその他の入力機器を介してユーザーからのコマンドを受け取るように構成されるユーザーインターフェースを含む。
【0072】
体外デバイスおよび/または植込み型デバイスは、ディスプレイを介して分析担当者に提示される推奨ペーシング遅延を決定してよい。ユーザーは、デバイスによって作成されたペーシング遅延の推奨を承認してもよいし、またはこれらの推奨を無効とし、植込み型デバイスにプログラムされる異なるペーシング遅延を選択してよい。
【0073】
図4A−Cは、デバイスの下限レート(LRL)と最大トラッキングレート(MTR)の間の、この2つのレートを含む9つの心房レート範囲のLVの収縮のデータ分析の例を図示したものである。図4A−Cは、分析担当者がデバイス性能を精査できるように、またはレートインデックス付きペーシング遅延を選択できるように分析担当者が観察するために、ディスプレイ上に生成され得るグラフを示す。これらのグラフのそれぞれは、9つのレート範囲での特定の種類のLV周期の割合を提供する。同様のグラフがRV周期でも
作成されてよいが、単純化のため、この例ではLV周期のみの説明を行う。
【0074】
図4Aは、9つのレート範囲で捕捉されたLV周期の割合を提供する。図4Bは、感知された固有のLVの脱分極が予定されたLVのペーシングを抑制したLV周期数を示す。図4Cは、融合収縮または固有の活性化を伴う捕捉不全を含んでいた、ペーシングされたLV周期の数を示す。固有の活性化を伴わない捕捉不全をもたらしたLV周期数も表示されてよいが、このグラフはこの特定の例では示されない。図5は、同じ軸に複数の種類のペーシング周期を表示するために使用されてよい積み重ね表示棒グラフを含む別のグラフを示す。
【0075】
植込み型デバイスおよび/または体外デバイスは、CRTペーシングによって達成される捕捉された収縮の割合の変化を受けて特定のアクションを起こしてよい。例えば、1つまたは複数のレート範囲内のLVおよび/またはRVでの捕捉された収縮の割合がプログラム可能な閾値パーセンテージを下回る場合、警告が生成されて臨床医に通知されてよい。あるいは、プログラム可能な閾値はデバイスによって自動的に再プログラムされてよく、変更の通知が臨床医に送達される。デバイスは、望ましいデバイスパラメータの再プログラムに関して、あらゆるレベルまたは頻度の通知および/または自動性を可能にするよう構成されてよい。
【0076】
デバイスは、より多くの収縮が捕捉されることを目的とするデバイス性能の向上を達成するため、保存データを分析し、ペーシング遅延を選択してよい。デバイスによって選択された推奨最適ペーシング遅延を表示するためのフォーマットを図6に示すが、他のフォーマットが使用されてもよい。図6では、推奨最適AVDL605が各レート610につ
いて示される。図6にさらに詳しく示されるように、各レートに使用される前AVDL
15ならびに各レートの測定AVIL625および測定AVIR630も比較のためユーザーに対して表示されてよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、分析担当者は、各レートについてデバイスによって推奨されたペーシング遅延を承認または拒否してよい、および/または他のペーシング遅延で置き換えてよい。例えば、いくつかの実施では、スクロールバー620を操作することによって各レートに関する推奨ペーシング遅延を分析担当者が独自に変更してよい。
【0078】
各レートでのペーシング遅延が選択されたら、デバイスはシミュレーションを実施し、シミュレーションの結果をユーザーに表示してよい。シミュレーションの結果は、例えば図5Aおよび5Bのグラフと同様の棒グラフまたは積み重ね棒グラフとして表示されてよい。シミュレーションの結果を観察した後で、ユーザーが選択されたペーシング遅延に満足した場合は、ユーザーは選択を確認してよく、その結果ペーシング遅延の選択が植込み型デバイスにアップロードされる。
【0079】
本発明に従ってペーシングパラメータの決定を実施するために多種多様な心臓デバイスが構成されてよい。そのようなデバイスの限定されない代表的なリストは、心臓モニター、ペースメーカー、カルジオバーター、除細動器、再同期装置、ならびにその他の心臓モニタリングおよび治療送達デバイスを含む。これらのデバイスは、経静脈電極、心内膜電極、心外膜電極(すなわち、胸腔内電極)、および/または非胸腔内の皮下電極、例えば缶電極、ヘッダー電極、および不関電極、ならびに皮下アレイ電極またはリード電極(すなわち非胸腔内電極)をはじめとする様々な電極の配置を使用して構成されてよい。
【0080】
図7は、本発明の実施形態に従ってCRTペーシングに使用されてよい患者植込み型医療デバイス(PIMD)を示す。この例では、植込み型デバイス700は、電気的および物理的に心臓内リードシステム710に接続される植込み型パルスジェネレータ705を
含む。
【0081】
心臓内リードシステム710の一部は患者の心臓に挿入される。心臓内リードシステム710は、心臓の電気的活動を感知し、電気刺激を心臓に送達するよう構成された電極751−758を含む。さらに、心臓電極751−758および/またはその他のセンサは、患者の経胸壁インピーダンスを感知するため、および/または生理的パラメータ、例えば心腔内圧または温度を感知するために使用されてよい。図7に示される電極751−758は、1つの実施可能な電極配置を示している。その他多くの電極の配置、例えば心臓内および/または皮下の胸腔内および非胸腔内電極が使用されてよく、本発明の範囲内に含まれるとみなされる。リードシステム710は、ワイヤー接続およびまたはワイヤレス接続された電極および/またはセンサを含んでよい。ワイヤレスの構成では、これらの電極および/またはセンサから感知された信号はワイヤレスでPIMDと通信し、および/またはワイヤレスで患者体外デバイスに接続されてよい。
【0082】
パルスジェネレータ705のハウジング701の一部は、場合により1つまたは複数の缶または不関電極としての役割を果たしてもよい。ハウジング701は、1つまたは複数のリードとハウジング701間の取り外し可能な接続を容易にするよう構成されてよいヘッダー789を組み込んだ状態で示されている。PIMDのハウジング701は、1つまたは複数の缶電極782を含んでよい。PIMDのヘッダー789は1つまたは複数の不関電極781を含んでよい。
【0083】
パルスジェネレータ705と患者体外デバイス、例えば外部プログラマー、または高度患者管理(APM)システムの間の通信を容易にするために、ハウジング701内に通信回路が配置される。通信回路は、1つまたは複数の植込まれた、体外の、皮膚の、または皮下の生理的または非生理的センサ、患者入力デバイス、および/または情報システムとの単方向または双方向の通信も促進してよい。
【0084】
パルスジェネレータ705は、各種の呼吸器および心臓関連症状のみならず患者の活動を感知するために使用されるセンサを場合により含んでよい。例えば、センサは、呼吸、いびき、活動レベル、胸壁の運動、ラ音、せき、心音、心雑音、およびその他の情報を感知するよう場合により構成されてよい。患者の活動情報は、デバイスタイミングの最適設定のために、レート情報と併せて使用されてよい。
【0085】
例えば、CRM700のリードシステム710およびパルスジェネレータ705は、患者の呼吸波形を取得し、呼吸関連情報を得ることができる、1つまたは複数の経胸壁インピーダンスセンサおよび回路を提供するよう作動してよい。経胸壁インピーダンスセンサは、例えば、心臓の1つまたは複数の心腔内に設置される1つまたは複数の心臓内電極751−758を含んでよい。心臓内電極751−758は、パルスジェネレータ705のハウジング701内に配置されるインピーダンス駆動/感知回路に接続されてよい。経胸壁インピーダンスセンサおよび/または活動センサからの情報は、患者の活動および/または血行動態ニーズに対応するようにペーシングのレートを変化させるために使用されてよい。
【0086】
リードシステム710は、患者の心臓からの電気信号を感知し、および/または心臓にペーシングパルスを送達するための、1つまたは複数の心腔内、心腔上、または心腔周囲に配置される1つまたは複数の心臓ペーシング/センシング電極751−756を含んでよい。心臓内センシング/ペーシング電極751−756、例えば図7に示すようなものは、左心室、右心室、および/または右心房を含む心臓の1つまたは複数の腔のセンシングおよび/またはペーシングのために使用されてよい。いくつかの実施形態では、左心房のペーシング用の電極も提供される。リードシステム710は、心臓へ除細動/カルジオ
バージョンショックを送達するための1つまたは複数の除細動/カルジオバージョン電極757、758を含んでよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、パルスジェネレータ705は、リードシステム710の電極および/またはハウジング電極781、782を介して心臓へ送達される電気刺激パルスまたはショックの形式で、心臓の頻脈性不整脈を検出するためおよび/または抗頻脈性不整脈ペーシング、カルジオバージョンおよび/または除細動治療を制御するための回路を含む。
【0088】
上述の治療操作の制御に加えて、パルスジェネレータ705は、心拍数の測定された固有間隔の測定、ペーシングに対する反応の判定、最適ペーシングパラメータを用いるルックアップテーブルの保存を含む本明細書に記載のCRTペーシングのためのレートインデックス付きペーシング遅延を実施するための、および/または1つまたは複数のペーシングパラメータ、例えばCRTペーシング用のAVDL、AVDRを決定するための回路を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、パルスジェネレータ705は、ペーシングパラメータの決定に関連する、感知されたまたは得られた情報を患者の体外デバイスに転送するよう構成されてよい。植込みによって感知されたまたは得られた情報のダウンロード後、ペーシングパラメータの決定は、分析担当者との交信の有無にかかわらず、患者体外デバイスによって自動でまたは半自動で行われてよい。ペーシング遅延の決定後、情報をパルスジェネレータ705にアップロードし、続いて、LVの捕捉を促進し、心機能を改善する方法で、心臓へ送達されるペーシングパルスのタイミングを制御するために使用することができる。
【0090】
図8は、本発明の実施形態による、一定のLV捕捉を促進するために選択されるペーシング遅延を使用するCRTペーシングを提供するために用いられてよい心臓治療システムのブロック図である。図8に示されるシステムの各種構成要素は、例えば図2、3A、および3Bのフロー図によって説明されるようなペーシング治療操作を達成するアルゴリズムを連携して実施する。
【0091】
図8に示した心臓システムは、外部プログラマー890および植込み型ハウジング701に納められた回路800を有するパルスジェネレータ700を含む。心臓システムは、パルスジェネレータ回路800に電気的に接続される各種電極751−758を配置するリードシステムをさらに含む。パルスジェネレータ回路800は、心臓電極によって感知された心臓の信号を受信し、ペーシングパルスまたは除細動ショックの形で心臓に電気刺激エネルギーを送達するための回路を含む。パルスジェネレータ700の回路800は、人体内への植込みに適したハウジング701内に納められ、密封されている。パルスジェネレータ回路800への電源は、電気化学的バッテリー880によって供給される。リードシステムコンダクタのパルスジェネレータ700への物理的および電気的取り付けを可能にするため、パルスジェネレータ700のハウジング701にコネクターブロック(図示せず)が取り付けられる。
【0092】
パルスジェネレータ回路800は、制御システム820およびメモリ870を含む、システムに基づくプログラム可能なマイクロプロセッサーを含んでよい。メモリ870は、各種ペーシング、除細動、およびセンシング操作のためのパラメータを、治療送達の制御のためのその他の情報とともに保存するために使用されうる。メモリ870は、ペーシング遅延値AVDL、AVDRを含むレートインデックス付きルックアップテーブルを保存できる。メモリは、電気記録図の信号データ、マーカー情報、測定心拍数、および固有間隔、例えばAVIL、AVIR、および/または心臓データも保存してよい。保存データは、
患者の状態の傾向の決定に、および/またはその他の診断的目的に使用されてよい、長期間の患者モニタリングから得られてよい。メモリ870に保存されたデータは、患者体外デバイス890、例えばプログラマーユニットまたは高度ペーシングマネジメントサーバーに、必要に応じて、または要望通りに送信されてよい。
【0093】
制御システム820およびメモリ870は、心臓システムのセンシングおよび治療操作を実施するためにパルスジェネレータ回路800のその他の構成要素と連携して働いてよい。制御システム820は、各種ペーシング反応、例えば捕捉、融合、捕捉不全、および固有の活性化を伴う捕捉不全を識別できる心臓反応分類プロセッサ825を含む。制御システム820は、AVDLおよびAVDRペーシング遅延を使用するCRTペーシングを制御するためのタイミング回路を含むペースメーカー制御回路822をはじめとする追加の機能的構成要素をさらに含む。パルスジェネレータ回路800は、検出された頻脈性不整脈を停止するために除細動および/またはカルジオバージョン療法を行うための不整脈検出装置821および回路850も含んでよい。
【0094】
テレメトリー回路860は、パルスジェネレータ回路800と患者体外デバイス890間の通信を提供するために実装されてよい。一実施形態では、テレメトリー回路860およびプログラマーユニット890は、体外ユニット890とテレメトリー回路860間で信号とデータを送受信するために、ワイヤーループアンテナと無線周波数テレメトリーリンクを使用して通信する。この方式で、プログラム指令およびその他の情報が制御システム820と体外デバイス890間で送信されてよい。
【0095】
患者体外デバイス890は、体外プログラマーまたは高度患者管理(APM)システムであってよい。高度患者管理システムによって、心臓のおよび/またはその他の患者の状態を医師またはその他の人員が遠隔から自動的にモニタリングできるようになる。APMシステムを介して、医師は遠隔的に、治療パラメータを変更し、デバイスおよび/または患者診断試験を実施し、および/または植込み型デバイスに保存された情報にアクセスしてよい。1つの実施例では、心臓ペースメーカー/除細動器、またはその他のデバイスは、APMシステムを介したリアルタイムでのデータ収集、診断、および患者の治療を可能にする各種通信技術および情報技術を備えていてよい。
【0096】
図8に示される実施形態では、電極RA−チップ752、RA−リング751、RV−チップ753、RV−リング756、RV−コイル758、SVC−コイル757、LV遠位電極755、LV近位電極754、不関電極781、および缶電極782は、スイッチマトリックス810によってセンシング回路831−837に接続される。
【0097】
右心房センシング回路831は、右心房からの電気的信号を検出し増幅する働きをする。右心房内での双極センシングは、例えば、RA−チップ752とRA−リング751の間で生じた電圧を感知することによって実施されてよい。単極センシングは、例えば、RA−チップ752と缶電極782の間で生じた電圧を感知することによって実施されてよい。右心房センシング回路831からの出力は、制御システム820に接続され、感知された心房の脱分極は、例えば心房トラッキングペーシングモードを実施するために利用されてよい。
【0098】
右心室センシング回路832は、右心室からの電気的信号を検出し増幅する働きをする。右心室センシング回路832は、例えば、右心室レートチャネルセンシング回路833および右心室ショックチャネルセンシング回路834を含んでよい。RV−チップ753電極の使用によって感知された右心室の心臓の信号は、右心室ニアフィールド信号であり、レートチャネル信号と呼ばれる。双極RV信号は、RV−チップ753とRV−リング756の間で生じた電圧として感知されてよい。あるいは、右心室内での双極センシング
は、RV−チップ753電極とRV−コイル758を使用して実施されてよい。右心室内での単極センシングは、例えば、RV−チップ753と缶電極782の間で生じた電圧を感知することによって実施されてよい。
【0099】
除細動電極の使用によって感知された右心室の心臓の信号は、ファーフィールド信号であり、ショックチャネル信号と呼ばれる。より具体的には、右心室ショックチャネル信号は、RV−コイル758とSVC−コイル757の間で生じた電圧として検出されてよい。右心室ショックチャネル信号は、RV−コイル758と缶電極782の間で生じた電圧として検出されてもよい。別の設定では、缶電極782およびSVC−コイル電極757を電気的に短絡させてよく、RVショックチャネル信号はRV−コイル758と缶電極782/SVC−コイル757の組み合わせの間で生じた電圧として検出されてよい。
【0100】
いくつかの実施形態は、左心房の信号を感知するための回路および電極を含んでよい。これらの実施形態では、電極は、左心房と、左心房からの電気的信号を検出し増幅する働きをする左心房センシング回路を含むパルスジェネレータ回路800に電気的に接続される。
【0101】
場合により、LVコイル電極(図示せず)が患者の心臓血管系、左心系の近傍、例えば冠状静脈洞に挿入されてよい。LV電極755、754、LVコイル電極(図示せず)、および/または缶電極782の組み合わせを使用して検出される信号は、左心室センシング回路836によって感知され増幅されてよい。
【0102】
電極751−758、781、および782の様々な組み合わせが心臓ペーシングと関連して利用されてよい。ペースメーカー制御回路822は、右心房用841、左心室用843、および右心室用844ペーシング回路とともに、電極751−758、781、および782から選択される電極の組み合わせによって送達されるペーシングパルスを生成する。ペーシング電極の組み合わせは、上述のようなペーシングベクトルの1つを使用して心腔への双極または単極ペーシングパルスをもたらすために使用されてよい。
【0103】
スイッチマトリックス810は、選択された組み合わせの電極751−758、781、および782を、センシング回路831−835、ペーシングおよび除細動回路841、843、844、850、および/または誘発反応センシング回路837に接続するよう操作されてよい。誘発反応センシング回路837は、本発明の実施形態による、ペーシングに対する各種反応間の識別を行うために選択された組み合わせの電極を使用して生成された信号を感知し増幅する役割を果たす。誘発反応センシング回路837は、心臓ペーシング反応を分類するために誘発反応センシング回路837の出力を分析する心臓反応分類プロセッサ825に接続される。ペーシングパルスの送達後に感知された心臓の信号は、例えば左心腔単独の捕捉、右心腔単独の捕捉、複数の心腔の捕捉、融合、捕捉不全、または固有の活性化を伴う捕捉不全として、ペーシングに対する反応を特定するために分析されてよい。
【0104】
いくつかの実施では、パルスジェネレータ回路800は、患者の活動または血行動態のニーズを感知するために使用されるセンサ861を含んでよい。1つの実施では、センサは、例えば、患者の活動を感知するよう構成された加速度計を含んでよい。別の実施では、センサ861は、患者の呼吸を感知するよう構成されたインピーダンスセンサを含んでよい。センサの出力は、患者の活動および/または血行動態的な要求を示し、センサで示されるペーシングレートの決定に使用されてよい。パルスジェネレータ700のペーシング出力を、レート適合ペーシングを提供するためにセンサで示されるペーシングレート信号に基づいて変化させてよい。
【0105】
本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書で上述した好ましい実施形態に対して各種の修正および付加が行われうる。従って、本発明の範囲は、上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、下記で説明される請求項とその等価物によってのみ定められるものである。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも左心室のペーシングを含む心臓再同期療法(CRT)ペーシングを送達するための心臓治療システムの作動方法であって、
ある心臓周期に対する、前記CRTペーシングの片方の心室または両方の心室への送達を予定するステップと、
心室の固有の脱分極が、前記心室のペーシング遅延中に検出された場合に、
前記心臓周期での前記心室に対する前記予定されていたCRTペーシングを抑制するステップと、
前記心臓周期での前記心室の固有間隔を測定するステップと、
以後の心臓周期での、前記心室の以後のペーシング遅延を、前記測定された固有間隔以下に短縮するステップと、
前記以後の心臓周期で、前記心室の捕捉が生じたかどうかを決定するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記ペーシング遅延が、右房室遅延、左房室遅延、および心室間遅延のうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記以後の心臓周期に続く1つまたは複数のさらなる心臓周期中に、前記心室の前記ペーシング遅延を既定量だけ延長するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記CRTペーシングを予定するステップは、左心室と右心室の両方に対する前記CRTペーシングを予定するステップを有し、
前記心室に対する前記予定されたCRTペーシングを抑制するステップは、前記左右心室の片方または両方に対する前記予定されたCRTペーシングを抑制するステップを有し、
前記心室の前記固有間隔を測定するステップは、前記左右心室の片方または両方の固有間隔を測定するステップを有し、
前記心室の前記以後のペーシング遅延を短縮するステップは、前記左右心室の片方または両方の以後のペーシング遅延を短縮するステップを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記心室の固有の脱分極が前記ペーシング遅延中に検出されない場合、
前記心室に前記CRTペーシングを予定どおり送達するステップと、
前記ペーシングに対する心臓の反応を判定するステップと、
前記以後の心臓周期での前記心室の前記ペーシング遅延を、前記送達されたCRTペーシングに対する前記心臓の反応に基づいて調節するステップと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記心臓ペーシング反応を判定するステップは、前記心室の捕捉、融合、および捕捉不全を識別するステップを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記心臓ペーシング反応に基づいて前記ペーシング遅延を調節するステップは、前記ペーシング反応として捕捉が判定された場合に前記ペーシング遅延を維持または延長するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記心臓ペーシング反応に基づいて前記ペーシング遅延を調節するステップは、前記ペーシング反応として融合が判定された場合に前記ペーシング遅延を漸次的に短縮するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
心拍数を測定するステップと、
前記測定された心拍数に基づいて前記ペーシング遅延を調節するステップと、をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記心臓ペーシング反応および心拍数に基づいて前記ペーシング遅延を調節するステップは、心拍数によるインデックス付けが行われたルックアップテーブルに基づいて前記ペーシング遅延を調節するステップを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記心臓反応が捕捉不全であると判定された場合、1つまたは複数のペーシングエネルギーパラメータを調節するステップをさらに有する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも左心室のペーシングを含む心臓再同期療法(CRT)ペーシングのためのペーシング遅延を設定する方法であって、
ある心臓周期に対する、前記CRTペーシングの送達を予定するステップと、
前記心臓周期での心拍数を測定するステップと、
少なくとも1つの心室の固有の脱分極が、前記少なくとも1つの心室の前記ペーシング遅延中に検出された場合に、
前記心室に対する前記予定されたCRTペーシングを抑制するステップと、
前記固有の心室の脱分極によって決定される前記心室の固有間隔を測定するステップと、
前記心室の固有の脱分極が前記心室の前記ペーシング遅延中に検出されない場合に、
前記心室の捕捉、融合、および捕捉不全を識別するステップを含む前記CRTペーシングに対する心臓反応を判定するステップと、
前記測定心拍数、前記測定された固有間隔、および複数の心臓間隔での前記心臓のペーシング反応に関する情報を保存するステップと、
前記測定心拍数と前記複数の心臓間隔での前記心臓のペーシング反応の間の関係を示す情報を臨床医に提示するステップとを含む、方法。
【請求項13】
前記測定心拍数、前記測定された固有間隔、および前記複数の心臓間隔での前記心臓のペーシング反応の1つまたは複数に基づく少なくとも1つの推奨ペーシング遅延を決定するために前記保存情報を分析するステップと、
前記少なくとも1つの推奨ペーシング遅延を、ユーザーインターフェースを介して前記臨床医に提示するステップとをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記測定心拍数、前記測定された固有間隔、および前記複数の心臓間隔での前記心臓のペーシング反応に基づく、推奨ペーシング遅延のルックアップテーブルを決定するために前記保存情報を分析するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも左心室のペーシングを含む心臓再同期療法(CRT)を送達できる心臓治療システムであって、
右心室および左心室に電気的に接続されるよう構成された電極と、
前記電極を介して、固有の脱分極の信号を含む心臓の信号を感知するよう構成されたセンシング回路と、
前記電極によって送達可能なペーシングパルスを生成するよう構成されたペーシング回路と、
前記ペーシングパルスに対する心臓反応を判定するよう構成された心臓反応分類回路と、
前記ペーシング回路を制御するよう構成されたペーシング制御回路であって、前記ペーシング制御回路は、ある心臓周期中の前記心室用ペーシング遅延に対して少なくとも1つの心室に対するCRTペーシングの送達を予定し、固有の脱分極が前記ペーシング遅延中に検出された場合は、前記心室に対する前記予定されたCRTペーシングを抑制し、前記
心室の固有間隔を測定し、以後の心臓周期のための前記心室の以後のペーシング遅延を、前記測定された固有間隔以下に短縮するよう構成されたペーシング制御回路と、を含む、システム。
【請求項16】
前記ペーシング制御回路は、捕捉が生じたと前記心臓反応分類回路が判定するまで、さらなる心臓周期のための前記ペーシング遅延をさらに短縮するよう構成されている、請求項15に記載の心臓治療システム。
【請求項17】
前記ペーシング制御回路は、前記心室の固有の脱分極が前記心臓周期の前記ペーシング遅延中に検出されない場合は前記CRTペーシングを送達し、
以後の心臓周期の以後のペーシング遅延を、前記送達されたCRTペーシングに対する前記心室の前記心臓ペーシング反応に基づいて調節するようさらに構成されている、請求項15に記載の心臓治療システム。
【請求項18】
測定心拍数、前記少なくとも1つの心室の測定された固有間隔、および複数の心臓周期に対する前記心室の心臓ペーシング反応を含む情報を保存するよう構成されたメモリをさらに含み、前記ペーシング制御回路は、前記心室に対するペーシング遅延を決定するために前記保存情報を分析するよう構成され、前記分析は、前記測定心拍数、前記測定された固有間隔、および前記複数の心臓周期に対する前記心室の前記心臓ペーシング反応を考慮する、請求項15に記載の心臓治療システム。
【請求項19】
前記ペーシング制御回路は、前記分析に基づいて前記心室に対するペーシング遅延のルックアップテーブルを作成するよう構成されている、請求項18に記載の心臓治療システム。
【請求項20】
前記ペーシング制御回路は、前記以後の心臓周期に続く1つまたは複数のさらなる心臓周期中に、既定量だけ前記心室の前記ペーシング遅延を延長するよう構成されている、請求項18に記載の心臓治療システム。
【請求項21】
前記ペーシング制御回路は、左右心室への前記CRTペーシングを予定し、前記左右心室の片方または両方に対するに前記予定されたペーシングを抑制し、前記左右心室の片方または両方の前記固有間隔を測定し、前記左右心室の片方または両方の以後のペーシング遅延を短縮するよう構成されている、請求項15に記載の心臓治療システム。
【請求項22】
前記ペーシング制御回路およびペーシング回路は、前記ペーシング遅延中に前記心室の固有の脱分極が検出されない場合に前記予定されたCRTペーシングを連携して送達するよう構成され、
前記心臓反応分類プロセッサは、前記心室の捕捉、融合、および捕捉不全を識別するステップを含む前記送達されたペーシングに対する前記心臓ペーシング反応を判定するよう構成され、前記ペーシング制御回路は、前記心臓ペーシング反応に基づいて前記以後の心臓周期に対して前記心室の前記ペーシング遅延を調節するよう構成されている、請求項15に記載の心臓治療システム。
【請求項23】
前記ペーシング制御回路は、前記ペーシング反応として捕捉が判定された場合に前記ペーシング遅延を維持するまたは延長するよう構成されている、請求項22に記載の心臓治療システム。
【請求項24】
前記ペーシング制御回路は、前記ペーシング反応として融合が判定された場合に前記ペーシング遅延を短縮するよう構成されている、請求項22に記載の心臓治療システム。
【請求項25】
前記ペーシング制御回路は、心拍数を測定し、前記測定された固有間隔、前記心臓ペーシング反応、および前記測定心拍数に基づいて前記ペーシング遅延を調節するよう構成されている、請求項22に記載の心臓治療システム。
【請求項26】
前記測定心拍数、前記測定された固有間隔、および複数の心臓間隔での前記心臓のペーシング反応に関する情報を保存するよう構成されたメモリと、
前記測定心拍数、前記測定された固有間隔、および前記複数の心臓間隔での前記心臓ペーシング反応の間の関係を示す情報を臨床医に提示するよう構成された体外デバイスとをさらに含む、請求項22に記載の心臓治療システム。
【請求項27】
前記ペーシング制御回路は、前記ペーシング遅延、前記測定心拍数、前記測定された固有間隔、および前記複数の心臓間隔での前記心臓ペーシング反応に基づいて以後の心臓周期のための少なくとも1つの推奨ペーシング遅延を決定するために前記保存情報を分析するよう構成され、
前記体外デバイスは、前記少なくとも1つの推奨ペーシング遅延を、ユーザーインターフェースを介して分析担当者に提示するよう構成されている、請求項26に記載の心臓治療システム。
【請求項28】
前記少なくとも1つの推奨ペーシング遅延は、右房室遅延、左房室遅延、および心室間遅延の1つまたは複数を含む、請求項27に記載の心臓治療システム。
【請求項29】
前記ペーシング制御回路は、前ペーシング遅延、前記測定心拍数、前記測定された固有間隔、および前記複数の心臓間隔での前記心臓ペーシング反応に基づいて推奨ペーシング遅延のルックアップテーブルを構成するために前記保存情報を分析するよう構成されている、請求項26に記載の心臓治療システム。
【請求項30】
患者の血行動態のニーズに基づいて出力を生成するよう構成されたセンサをさらに含み、前記ペーシング制御回路は、前記センサ出力に基づいて前記ペーシング遅延を調節するようさらに構成されている、請求項15に記載の心臓治療システム。

【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図7】
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【図8】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−522574(P2011−522574A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508610(P2011−508610)
【出願日】平成21年5月5日(2009.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/042872
【国際公開番号】WO2009/137502
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】